馬医
2017年 10月 24日2014年MBC、演出イ・ビョンフン、チェ・ジョンギュ、脚本キム・イヨン、出演チョ・スンウ、イ・ヨウォン。
おはなし:馬医が出世して王様の主治医になります
クァンヒョン無双
馬医から王の主治医まで出世したペク・クァンヒョンという人物は実在しているらしく、彼を題材にした、イ・ビョンフン監督のオリジナルエンタメ史劇。
イ・スンジェやハン・サンジン、イ・ヒドなどおなじみの「イ・ビョンフン組」が脇を固め、ミュージカル俳優だったチョ・スンウのドラマ初主演を盛り立てます。
イ・ヒドさんは、いつもはクソエロ親父役の笑かし隊で、彼のシーンは早送りしがちなんだけど、このドラマでのクァンヒョンの親代わりの真面目なおじさん役は、なかなか良くてじっくり見ちゃったわ。
ついでに、「イ・サン」でテスと3人組だったソ・ジャンボナウリとカン・ソッキナウリが、悪役剣士と医官の敵同士に別れちゃったのは残念。ソ・ジャンボナウリ好きだったのに。
ちょうど「六龍が飛ぶ」でキル・テミが死んだ辺りに見始めたこのドラマ。第一話から主人公クァンヒョンの父親役にチョン・ノミン&養父役にパク・ヒョックォンという、「六龍」ホン・インバン&キル・テミコンビが出てきて、わたしのキル・テミロスを補ってくれました!(もちろん、「六龍」とは全然違う役だけど)
しかし、このドラマのチョン・ノミンさんは実に爽やかでいい人の役!今まで、「善徳女王」のソルォンとか「最強チル」のミン士官とか、神経質でちょっとニヒルな役でしか見たことなかったから、こんなに明るい笑顔も出来る人なのね~とちょっとビックリ。
でも素敵。好き!
そんなこんなで、つかみはOKで始まったこのドラマ。イ・ビョンフン監督の作品らしく、悪役は悪役らしく、善人はとことん善人で、最終的には正義は勝つ!な展開で進みます。
馬医は身分としては賤民てことで、いろいろ差別されたりするクァンヒョンですが、持ち前の鍼の腕でのし上がっていくわけです。
まあ、その辺のドラマ展開は面白いし、いいんだけど、問題はクァンヒョンが行う「外科用の鍼」を使った手術シーン!
いや別に、東洋医学を腐すつもりはないんだけど、いくらなんでもクァンヒョンのする手術はあの時代(顕宗の時代だから日本だと家光の頃!)にして無茶すぎる!
鍼で麻酔をして乳がんを取るのは、無理があるとは思うがまだわかる。壊死した足を切断するのも、まあ血流もなさそうだし出来ないことはないだろう。
しかし内臓はあかんやろ、さすがに死ぬやろ。
たぶん本物のペク・クァンヒョン医官は鍼が上手で、もしかしたら、ちょっとした外傷くらいは治してたかも知れない。でも内臓だの癌だのはきっと治してないと思うの。
このドラマでも、さすがに「癌」という言葉は使わないんだけど、「腫気」が韓国では流行っていたとの設定。腫気ってなんやねんと思えば、「毛穴などに化膿性菌が入って炎症を起こす病気」とのこと。
まあ、要は感染症なんだけど、「JIN~仁」じゃないんだから抗生剤はない。てことでメスみたいな鍼で病巣をひたすらかき出すクァンヒョン。傷が化膿したら、また掻き出して、史劇名物よくわからない草を塗りつけていっちょ上がりです。
日本より湿気ないはずなのに、そんなに感染症が流行ってたのか朝鮮よ。どんだけ汚かったのだよ、と言いたい。
ちなみに、日本で初の全身麻酔による乳がん手術をしたのは、ご存知、江戸時代末期の華岡清州。まあ、こちらは西洋医学ですけども。
中盤くらいまでは、それなりに医療考証されてたと思われるんだけど、後半の内臓手術に至っちゃうクァンヒョン無双は無理がありすぎて笑っちゃう。ネタとしてなら笑えるけど、これ、信じてしまう韓国の人いるんじゃないのかしらねえ。
もう、感染症が悪化した菌血症まで漢方で治っちゃった日には、西洋医学イラネって感じじゃまいか。だいたい、意識不明なのになんで漢方薬飲めるんだよ!誤嚥して、今度は肺炎で死ぬっつうんだよ。
イ・ビョンフン監督のドラマは基本勧善懲悪で、毎回50話超えの長丁場ですが、前半はスローモーションのように長く、中盤は面白く、後半は詰め込みすぎて適当になるてのがデフォルト。
このドラマも、せっかくの「クァンヒョン実は両班の跡取り」設定も、引っ張りまくったあげくに、効果的に使うことが出来ず、さらっとフェードアウトしてしまった感じ。
面白くはあったけど、いまいちスッキリ感はなかった「馬医」でした。
それにしても、せっかくのミュージカルスター、ちょっとぐらい歌が聞きたかったなあ。ようつべで見たら、チョ・スンウは石丸幹二ばりの、正統派シンガー!スンウバルジャンのレミゼが見たいぞ!!